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シャトーラギオールVSライヨール

シャトーラギオールVSライヨール

フランスにある2つのナイフメーカー。
どちらも由緒ある村の名を冠した2社のソムリエナイフを徹底比較。


※現在、シャトーラギオールのメーカーは「LIGNE|W(リニューW)社」へ変更となっております。


数あるソムリエナイフの中でも、高級品として最も人気のあるのが、フランスのほぼ中央、オブラック地方のアヴェロン地域に位置する、ナイフとチーズでよく知られた小さな村「Laguiole」の名を冠したナイフである。

ところがこの村の名を冠したソムリエナイフには、まったく異なるメーカーから多数の商品が市場に出回っている。

その中でも、代表格である2つのメーカーがある。
その名もスキップ社の「シャトーラギオール」と、ライヨール社の「ライヨール ソムリエナイフ」。

どちらもフランスの会社だが、両社とも「我こそ本物」と自信満々。論争は「熱い冷戦」の様相を呈している。両社の主張は以下の通り

スキップ社(シャトーラギオール側)
Laguiole村の伝統とイメージを生かし「ソムリエナイフ」を生み出したのは我が社である。ワインを熟知した者だけが真のソムリエナイフを作ることが出来る。

フォルジュ・ドゥ・ライヨール社(ライヨール ソムリエナイフ側)
相手方はLaguiole村ではなく、ティエールという場所で作っている、我が社こそがLaguiole村の歴史を背負った本物である。

両社共に一歩も引かない状況が続いている。
(日本で言えば京都に歩道をはさんで本家論争をしている「あぶり餅」を思い出してしまう...)

では、歴史の面から見るとどうなのか・・・


Laguioleの発音について

「LAGUIOLE」の発音については、フランス南部では「ライヨール」、フランス北部では「ラギオール」と発音し、いわゆる方言といった感じ。
フランス全土から上京してくるパリでは「ライヨール」と「ラギオール」の両方が混在する。


Laguioleの歴史

14世紀からフランスのティエールでは刃物産業が始まり、18〜19世紀には刃物文化の中心地として発達をしていた。

同じ18世紀ごろ、標高1000〜1500メートルの山々に囲まれたラギオール村では、冬になると農作業ができなほど雪が降るため、スペインへ出稼ぎに向かい、帰りには美しいポケットナイフをお土産に持ち帰る習慣があった。(スペインから持ち帰った金属製のナイフが、実はラギオールナイフの原形ではないかという説もあります。)

日用品として使用されていたナイフは、非常に簡素なものだったが、ラギオール村の牧童たちにとっては第3の手のようなもの。ナイフなしには1日たりとも過ごせなかったという。牧畜の仕事はもちろん、1日の仕事を終えて神に祈るとき、十字架の代わりにナイフを大地に刺し、深く頭を垂れていた。

1829年にライヨール村に生まれ育った1人の少年が、村の名産ともいえる水牛の角をナイフのハンドル部分にあしらったのが「ラギオールナイフ」の最初とさせているが、彼は刃物を作る職人ではなかったため、数点のみのナイフを作っただけで産業までには発達しなかった。

昔からライヨール村は酪農が中心で、刃物製造産業が無かったことから少年の開発したライヨールナイフは、19世紀末ごろティエールで製作されるようになった。この頃、村の過疎化がどうしようもないほどに進んでしまい、農業や牧畜を捨てて都会へ行く人々は土地の折り畳みナイフをお守りのようにたずさえていったという。


Laguioleソムリエナイフの誕生

ラギオール村からパリへ移住した人々の中には、なぜかカフェの経営で成功した人々が多い。
パリで最初のカフェといわれる「カフェ・コスト」やサンジェルマン・デ・プレの「ブラッスリー・リップ」などの有名カフェを興したのはこの村の出身者達である。彼等がワインの栓を抜いたりパンを切ったり、と仕事の道具として使ったのが村から大切に持ってきたナイフだったのである。

ときは移り1985年、絶滅の危機にひんしていたラギオール村のナイフ作りの伝統を見直し守っていこうと、村出身のカフェのオーナーら5人の若者が「ライヨール・ナイフ協会」を設立。1987年にはフィリップ・スタルクをデザイナーに迎え、村の倉庫跡地に部品から完全一貫製造をする「フォルジュ・ドゥ・ライヨール社」が産声をあげた。
※ライヨール村には沢山のお土産屋があり、さまざまなライヨールナイフが販売されていますが、ライヨール村でパーツから組立てまで一貫生産しているメーカーは少なく、フォルジュ・ドゥ・ライヨール社もパーツは外部から、組立てのみとなっています。(2011年現在)

1993年、フランス随一といわれる名ソムリエ「GUY VIALIS ギー・ヴィアリス」氏が本格的なソムリエ用ナイフを作りたいと熱望した。
ラギオールの村からやってきたカフェの主人達が持っていた美しいナイフを思い、ワイン専用ナイフの製品化を進めていったが、元々ラギオール村には刃物産業が無かったために、ヴィアリス氏は刃物産業の一大中心地、オーベルニュ地方のティエールにあるナイフビルダー、1850年創業のスキップ社を訪ね、共同で開発に取り組んだ。

数カ月の試行錯誤のうえ、ついに完成した「シャトーラギオール」は、1993年にボルドーで開催されたVINEXPO(ワインを主とした世界規模の展示会)でお披露目され、来場者に大きなインパクと与えた。(日本には1994年10月から輸入が始まる)

それから1〜2年ほど後の1995年頃、「フォルジュ・ドゥ・ライヨール社」がフィリップ・スタルクデザインのソムリエナイフを発表。
ティエール産「ラギオール」とフォルジュ・ドゥ・ラギオール産「ライヨール」という図式はこうしてでき上がった。
よく見比べば細部のデザインや作りはまったく違うのだが、一見した雰囲気があまりにも似ていたのだ。

ソムリエナイフの分野では、すでに「シャトーラギオール」は確固たる地位を築いており、トゥール・ジャルダンをはじめとする名だたるレストランのソムリエや、世界ベストソムリエ達がこのナイフを使っていた。

そこへ、フランス歴代大統領やあのジャック・イヴ・クストー船長(フランスの海洋学者。アクアラングの発明者でもあるそうです。)らも所持し、国民的ナイフのメーカーとして名をなしていたライヨール社が殴り込みをかけた格好になったわけである。


ではシャトーラギオールとライヨールソムリエナイフを比較してみましよう。


■ボディ(ハンドル)

●シャトーラギオール

ラギオールナイフの優雅なシルエットを守り、プロの要求から生まれた現代のソムリエナイフ、緩やかにカーブしたハンドルラインが握った手との一体感を作り出す。

シャトーラギオール

●ライヨール

フランスの伝統的なナイフのシルエットが牧歌的なムードを醸し出すソムリエナイフ、折りたたんだ時すべてのパーツがハンドルと一体化してしまうデザインが美しい。ハンドルには鋲で十字架の模様が付けられている。これは昔、野外でナイフを土にさしてこれを十字架に見立ててお祈りをしていたなごり。

ライヨール


■握った感触

●シャトーラギオール

ソムリエコンクールの上位入賞者のほとんどが使用。プロなどの使用頻度が多い場合にも耐えられるようフォイルカッターやスクリューの出し入れが硬くなっているが、自分好みになじませる楽しみがあるという人も多い。

シャトーラギオール

●ライヨール

シャトーラギオールに比べると胴の中ほどにやや膨らみがある。握ったときにこの厚みが手にやさしく安定感があるという人もいる。

ライヨール


■スクリュー

●シャトーラギオール

スクリューがよりコルクに入るよう根本が矢の形になっている。こだわる人はこの根元をもっと鋭くなるようヤスリで削るそうだが、保証が利かなくなるのでご注意を!

シャトーラギオール

●ライヨール

ラギオール村のホテルレストラン「ミシェル・ブラス」のソムリエがデザインに参画しているそうだが、スクリューの根本までこだわってほしいところだ。(現在は改良されている模様)

ライヨール

共にコルクに入る抵抗を少なくするために「溝」が付いている。


■フォイルカッター

●シャトーラギオール

ノコギリ刃の部分が30mmと長く、少ない力でボトルの周囲を回転出来る。先端は危険のないよう丸く処理してある。

シャトーラギオール

●ライヨール

栓抜きを兼ねたフォイルカッター。ノコギリ刃のカーブはボトル口にあてて回転させる動きを計算して設計。根元にはフランスの特許庁にあたる機関に承認を得た原産地表示を兼ねたロゴマークが刻印。

ライヨール


■フック

●シャトーラギオール ●ライヨール
シャトーラギオール ライヨール
栓抜きを兼ねたフック。スキップ社の登録商品「シャトーラギオール」の文字が刻印。 閉じた状態のデザインにはしり過ぎたかフック根本の金属厚みが薄い。


■ラギオール村のシンボルマーク(ミツバチ)

●シャトーラギオール ●ライヨール
シャトーラギオール ライヨール
ティエール産シャトーラギオールのほうが、伝統的なラギオールのミツバチマークをそのままに使用。 ライヨールのソムリエナイフは、シンボルのミツバチがモダンにデフォルメされている。


※ライヨールの販売は行っておりません。


■最後に・・・

両社ともに伝統的な「ライヨールナイフ」をルーツとしているが、厳密な復刻を目指している訳ではないので、そもそも「本家」とか「元祖」という論争はナンセンスな話しではないだろうか。
元祖論争に惑わされる事なく、憧れのソムリエを決めて選んだり、素材やデザインで選んだりと、お好みの逸品を選んで頂ければ幸いです。


参考資料

・ラピタ「ソムリエナイフ戦争」(1998年)
・MONOマガジン「ソムリエナイフの本家を探せ」(1998年)
・ペン「これは、欲しい。」(2006年)
・SCIP社からの資料(2006年)より抜粋


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